神社本庁

神道

死後について

 死後について神道では、神と同様、霊魂は永遠に残ると信じられている。しかし霊魂は実体的に捉らえられるものではなく、その働きによって存在を信じられて来たのであり、その霊魂の所在について神道信仰の典拠となる古典籍(古事記・日本書紀・万葉集など)には多くの他界が語られている。それらどの他界にも神がおられるが、代表的な他界はまず最も尊い神々の居られる天上他界、次に国生みの母神が居られる夜見(よみ)、これは長く地下世界と考えられて来たが、それは死体埋葬の習俗に由来していると思われるものの、今日学問的には疑問視されている。そして第三が常世(とこよ)と呼ばれる海上の彼方に想定されている他界である。また農村の民間信仰では山中他界信仰も強く見い出される。これは墓の多くが生きていた時の生活空間を見遥かす丘や小山に設けられた事、また死者が生前死んで後も子孫を見守っていたいとの希望を表明していた歴史的信仰事実に基づくと考えられている。しかしこれ等総ての他界は、人間の生きている現実の世界と比較して、理想的には描かれていないし、また地獄のようにも描かれてはいない。現実の世界と全く変わりがないのである。これは神霊も現実世界でお祀りさえすればこの世にすように、死霊もまたこの世の人が祭れば時を問わずこの世に来臨されるという信仰が生きているからだと考えられる。しかも神や祖霊は我々子孫が祭りを絶やさない限り、我々子孫を守護し幸を与えて下さると信じられているのである。神道は来世中心信仰ではなく、現世中心の信仰であると言って良いだろう。