神社本庁

祭りのパラダイム(理論的枠組み)

生命力の再生

 祭りは日本の地域社会固有の宗教的、文化的現象である。今日の東京においても、毎年多くの祭りが行われている。例えば、5月には「神田祭」、「三社社」、6月には「山王祭」、7月には「住吉祭」がある。
 この「祭り」の基本的なテーマは、神と人間が与えられた生活空間のなかで生命力を再生させることである。地域社会を挙げて神を迎え、その神徳を高め、その神徳の力を自分の命のなかに取りこもうとして、一連の象徴的な行為をする。その過程でこの生命力の再生が起こるのである。(注1)
 普通、地方共同体には、市、町、村を問わず何処にも「氏神」が祀られている。「氏」は「一族」を意味するところから、「氏神」とは一族の守護神、つまり家族と共同体を守る神を意味する。共同体の構成員は全て「氏子」もしくは「一族の子供」と考えられている。そこから共同体の全員が「氏神の子供」とみなされるのである。「氏神」と「氏子」の関係は親子のそれに似ているのである。この関係が伝統的規範の一つとして働き、日本人集団の生活を規定している。このようなことから、神社神道は、古代の血族関係を領土的に限定された一つの社会単位に重ね合わせた、といえるであろう。

(注1)生命力の減退とか生命を危険にさらすようなことは宗教上のケガレと考えられ、「祭り」に参加する人々はそのようなことを注意深く避ける。古代においてはケガレの主たる原因は出産、月経、肉食、塩気、人間および家禽の死、などであり、全て「血」と「死」に関係している。その後は、ケガレはより精神的、あるいは内的なものを意味するようになった。しかし現代においても、死と関係あることは全て「祭り」の行事から切り離されている。例えば、もし共同体の誰かが死んだ場合、その葬式は「祭り」が済むまで延期され、前年に死者が出た家族は「祭り」の準備や行事に参加することが禁じられる。