神社本庁

神々の森の文明

聖なる森

 英国のウエールズ出身で今は長野県の黒姫高原に在住する作家、C・W・ニコル氏は、「聖なる森」という寄稿文※1のなかで、アフリカ・ザイールの熱帯雨林イトゥリに凄むピグミー族(ムブティ人)が案内してくれた彼らの聖地でのエピソードを紹介し、次のように語っている。
 そこは高い木々にかこまれた岩穴で、辺りには鳥や猿の声、美しい滝の流れる水音だけが響く、それは素敵な場所だった。褐色の肌を持つ小柄な狩人は腰蓑一つという出で立ちで、手には弓と毒矢を持っている。その彼が花を一輪手折って髪に挿した。誰かが問う、どうして神がここに居ると分かるのですか。あなたには神の姿が見えるのですか。私は馬鹿な質問だと思ったが、その狩人は笑顔で答えた。神の姿は見えない、だが見えなくても此処に居ることは分かる。
 ニコル氏は、この狩人の答えに心底共感して、「どこの国であろうと宗教が何だろうと、聖なる地・聖なる森において、目に見えない存在を疑うほど私は未熟ではない。」と書き、最後に「日本人であれば、悩みがあったらどんな信仰を持っている人でも、お宮を訪ねなさい。」と結んでいる。

※1:平成3年7月22日付「神社新報」