神社本庁

自然、それは神―神道からのメッセージ

神道からの提言

 神道では、自然や国土は夫婦神から生まれた御子神たち、すなわち、自然そのものを神と捉えています。今日、「自然にやさしく」とか「地球にやさしく」といった言葉を耳にしますが、本末転倒もはなはだしいと言わざるをえません。「環境保護」という言葉でさえも、科学技術によって環境を修復しようといった人間中心の支配的な意味合いを感じます。神とは全ての生命の根源であり、あらゆるものの生命が神につながります。ここに生命の尊さが生まれ、自分自身も生かされているのだという自覚と感謝が生まれるのです。
 日本人は、古代より土地や自然や生命など、目には見えない存在に畏敬と感謝の念を持って接してきました。「バチがあたる」とか「もったいない」という気持ちです。そして、自然から恵まれたものは、自然にお返しする。見事なまでの循環型社会が江戸時代(西暦1603年~1867年)までは続いていたと言われています。その後、近代産業の発展に伴い、日本人の暮らしは確かに向上し、今日では外見上なに不自由ない生活を送っているかに見えます。しかし、日本人古来の大切な心は徐々に失われ、奥深いところに隠れ潜んでしまったかのようです。環境問題に限らず現代社会のかかえるあらゆる問題が、これに起因すると言っても過言ではありません。
 環境問題は、結局のところ、自覚・自立の問題と言われています。自分自身がどのような立場に立って物事を見るかによって、その結果は全く異なります。すなわち、すべての人類が思想・信条・宗教を超越したところに、新たな価値観として「畏敬と感謝の念」を抱くことです。それは、親が子を思う心、あるいは兄姉が弟妹を思いやる心と言えば、おわかりいただけるでしょう。その心を隣人、社会、国家、世界の人々、そして自然にも及ぼしていけば良いのです。この心は、社会生活を送る上で欠くことのできない規範や礼節や道徳を培うもとにもなります。