神社本庁

自然、それは神―神道からのメッセージ

神道における神

 神道は、このような日本人の神観念をもとに、社会生活の中から自然に発生したものです。神道には教義や教典や教祖といったものはなく、八百万と言われるほど多くの神々を信仰の対象としています。その中で、天照大御神を最も貴い神としながらも、唯一絶対神とする観念はなく、他の神々との間に上下関係や優劣関係のようなものは存在しません。人と同じように神々にも個性があり、それぞれの神が有する個性を御神徳として信仰しています。
 本来、国土も自然も人も神から生まれた子であり、この世に存在する何もかもが神となる可能性を有しています。しかし、神は、人間の知恵や力を超え、良くも悪くも人間に大きな影響を与える存在に限られます。自然の場合には、雨の神・風の神・山の神・海の神・川の神・雷神などで、稲作を中心とする農耕社会では、いずれも人間の生活に深くかかわるものです。
 山の神に対する信仰で言えば、農耕社会において水は不可欠です。人々はその水の源である山に対して神聖感を持つようになり、やがて、神体山として敬うようになりました。この信仰は、結果的に、山林の環境を保護するだけでなく、森の栄養分が川をつたって海に流れ込み、日本近海の漁場をも育むなど、生態系全体を保護することにもなったのです。
 このような神体山に対する信仰は古くからあったものです。今日のほとんどの神社が、神の住居である建物を有し、そこで祭りが行われていますが、このような形態は古代ではむしろ例外にあたります。
 神々に対する祭りは、年間を通じて、その地域に根ざした大小さまざまなものがありますが、その多くは農業信仰に根ざすものです。規模の大きいものでは、その年の五穀豊穣を神に祈る祈年祭(春祭り)、その年の実りを神に感謝する新嘗祭(秋祭り)などがあります。これらの祭りは、いずれも氏子といわれる地域の人々とともに、毎年かかさずに厳粛に行われてきました。その意味では、神道は、日本人がもつ、土地や自然や生命に対する畏敬と感謝の念によって成り立っているとも言えます。