34 秋の神 龍田姫

たつたひめ たむくる神のあればこそ 秋のこのはの ぬさとちるらめ

『古今和歌集』

 

秋をつかさどる神ともいわれる龍田姫に思いを馳せながら、秋から冬へと移ろう季節の風景を詠んだ歌です。
昔の旅では、五色の絹を細かく切ったものを袋に入れて携帯し、旅の安全を祈りながら、道中の神々にまき散らして捧げる習慣がありました。
詠み人・兼覧王(かねみのおおきみ)は、

「紅葉した木の葉が舞っているのは、任務を終えて帰ってゆく龍田姫が、旅の安全を祈って、道中の神々に幣を捧げているからだ」

と想像しています。
神さまが神さまに幣を捧げる…。
この豊かな発想が、この歌の魅力だといわれています。

東西南北のうち「西」は秋に配せられることから、平城京の西方にあたる龍田(現在の奈良県生駒郡あたり)に坐す龍田姫が「秋の神」と認識されるようになったといわれています。
平安時代に編まれた『延喜式』神名帳にも「龍田比古龍田比女神社」という記載が見られます。

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