28 春の神・佐保姫(さほひめ)

sahohime
佐保姫の糸そめかくる青柳をふきなみだりそ春の山かぜ
(佐保姫が糸を染めて掛けている柳の枝を吹き乱さないでおくれ、
春の山風よ)

佐保姫は、奈良の都の東方にある佐保山にまします神さま。
方位に於いて「東」が「春」を意味することから、佐保姫は春を掌る神とされてきました。「佐保山」とは、奈良盆地を流れる佐保川付近にある山々の総称といわれています。
古来、春の野山にかかる霞は、佐保姫の織りなす薄い布であると解され、その情景は、和歌や物語に多く描かれています。
世阿弥の著した脇能物(わきのうもの)「佐保山」も、春霞に誘われて佐保山へ登った藤原俊家が、佐保姫の衣をさらしていると言う不思議な女性たちに遭遇、その夜、木陰で休んでいると佐保姫が現れ、美しく舞ったという幻想的なものです。

冒頭の和歌は、天徳四年(960)、村上天皇が催した「天徳内裏歌合(てんとくのだいりうたあわせ)」において、平兼盛が詠んだ和歌です。
 歌合とは、歌人を左右二組に分け、詠んだ歌の優劣を競う行事です。「天徳内裏歌合」は、当代一流の歌人が名を連ね、歌題、調度、装束の色目など、高い趣向が施されたもので、後世の歌合の模範になったといわれています。


平成29年3月1日

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